賃貸不動産経営管理士 過去問分析-INDEX-

賃料増減請求権の行使

賃貸住宅管理業法や借地借家法の過去問分析において、賃料増減請求権の行使は、普通建物賃貸借と定期建物賃貸借の違いや、紛争時の具体的な清算ルールが問われる頻出の論点です。

1. 賃料増減請求権の発生要件と特約の有効性

土地・建物に対する租税等の増減、経済事情の変動、近傍同種の賃料との比較により賃料が不相当となった場合、当事者は将来に向かって賃料の増減を請求できます。

  • 普通建物賃貸借における特約:
    • 「増額しない」特約は有効ですが、「減額しない」特約は無効とされます。つまり、減額禁止特約があっても借主は減額請求が可能です。
    • 「賃料改定は協議により行う」という特約があっても、協議が調わない場合は増減請求権を行使して裁判所に判断を求めることができます。
  • 定期建物賃貸借における特約:
    • 定期借家では、特約により賃料の増額請求権および減額請求権のいずれも排除することが可能です。
  • 終身建物賃貸借における特約:
    • 終身建物賃貸借においても、特約により増額・減額の両請求権を排除できます。

2. 請求権行使の法務と手続き

  • 行使の方法: 口頭による通知でも権利行使として認められますが、実務上は証拠を残すために内容証明郵便等が用いられます。通知が相手方に到達した時点から効力が生じ、賃料が不相当となった過去に遡って効力は生じません。
  • 管理行為としての性質: 貸主が複数いる共有物件の場合、賃料増減請求権の行使は「管理行為」に該当するため、持分価格の過半数の同意が必要です。また、借主が複数の場合は、全員に対して通知を行わなければ効力が生じません。
  • 調停前置主義: 賃料増減に関する訴訟を提起するには、原則としてまず民事調停を申し立てる必要があります。

3. 裁判確定までの賃料支払いと確定後の清算

裁判で正当な賃料額が確定するまでの間は、以下のルールに従います。

  • 増額請求を受けた借主: 自分が相当と認める額(従前の賃料等)を支払えば、債務不履行にはなりません。
  • 減額請求を受けた貸主: 裁判確定までは、相当と認める額(従前の賃料等)を請求し受領することができます。
  • 確定後の利息: 裁判確定後、支払額に不足や超過があった場合は、その差額に年1割(10%)の利息を付して精算しなければなりません。なお、民法の定める法定利率(年3%)ではない点に注意が必要です。

4. 民法上の「当然減額」との区別(重要)

借地借家法上の増減請求権とは別に、令和2年施行の改正民法により、賃借物の一部が滅失等で使用できなくなった場合、その割合に応じて賃料は当然に減額されることとなりました。これは「請求」を待たずに法律上当然に減額されるものであり、増減請求権の行使とは性質が異なります。